ないまぜ日記

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眼福

勤め先の敷地内に小さな祠がある。

とりあえず柏手を打っておいた。その御利益のお陰で雇われたかもしれない。

 

前職よりも仕事は多岐に渡る。現場あるあるな書類に社印を押印してPDFで送ってくれ!といった雑用から、隣県への現調、主な仕事も複数の案件を掛け持ちしているせいか、なかなか歯応えがある。だが最も難儀な事は部内の意思疎通が機能不全を起こしている事だ。またかよ。

 

上司と部下の間に深い溝がある事にはすぐ気が付いた。何しろ勤務初日に現場で打合せた時、現場に常駐する部内最年少の彼から愚痴を散々聞かされた。私の息子と言ってもおかしくない彼は、かなり上司から標的にされているようだ。そうやって潰されて辞めていく人を腐るほど見てきた私としては、息子を助けてやらなきゃ!と妙な使命感を感じている。私と入れ替わりのように辞める人がいた為、余計に心配になった。初めのうちは関わらないように距離を置いていたが、あっという間に巻き込まれてしまった。

 

息子には一人で抱え込まずに周り全員巻き込んで良いから助けてもらえ!と忠告したら、素直な彼はそれ以来、何か困るとチャットで「ヘルプ!」と私を呼び出す。雑用を頼めるような気軽に言える人がいなかったという事なのだろう。なんて不憫な息子よ。

 

息子ともう一人、現場に常駐している責任者は非常に冷静沈着で生真面目だ。禁欲的に見えるほどで、若いのに仕事に関しては実に厳しい責任者であるその人を息子は煙たがっている様子である。

 

ところがである。その禁欲的で生真面目なその人は、思わず感心する程の二枚目である。市川雷蔵眠狂四郎みたいなキリリとした眉をしている。あの眉はメーキャップだが彼は地毛であれである。私以外の同僚からは某有名ロックバンドのボーカルに似ているという専らの評判である。実際、似ていると言われた事が何度もあったそうだ。余りの二枚目っぷりに、色々と仕事を頼まれた際に「しょーがない。二枚目だから許す!」と何度も言っていたら、いつもクールだった彼が私の冗談に乗ってくれるようになった。

 

報告書を提出するのに、掛け持ちしているせいか面倒臭い上に、内容をどう書くか捻り出すのに時間がかかる。報告書に盛込む内容で雷蔵にチャットで問い合わせ「書くのに神経すり減らすんだよねー。」と送信したところ「分かりました。私からその事は上司に相談してみます。」と返信がきて焦った。「おい、ちょっと待て! 冗談だから本気で心配するな。」と正義感が強過ぎる雷蔵に慌てて返信して事なきを得た。

 

その時はただ焦っただけだったのだが、後で考えると雷蔵のやった事がすご過ぎて笑ってしまった。まるで塔に閉じ込められた姫を救う白馬の騎士みたいな行動だ。さすが二枚目はやる事も二枚目なのである。救われそうになったのはババアなのだが、救う方は白馬の王子様系がサマになる。あの顔で軽薄ではないという奇跡(笑)。

 

こりゃーモテるの仕方なし。普段、雷蔵は現場にいる為、チャットか電話で打合せるのだが、たまに本社で打合せる事もある。そして打合せの間、せいぜい1時間くらいの間に女性達が入れ替わり立ち替わり近づいて来ては何かしら声を掛けていくのだ。その様子が面白くて仕方ない。恐らく子供の頃から不本意ながら片想いされた事が数多あるのだろうなぁ。女が寄って来ないよう笑顔を封印する為、いつもクールな振る舞いなのかもしれない。などと妄想しながら、女性達が実に嬉々として雷蔵に話しかけていくのを眺めている。中でも一人は本気なのかなと思わせる女性もいて、恥ずかしそうに話しかけるのを見ていると、えも言われぬ甘美な感傷を感じてしまう。青春だなーー、甘酸っぱいなーーーーー、と見守りたくなる。

 

実に眼福。