ないまぜ日記

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The Singing Detective

歌う探偵。
何がなんだか分かんないタイトルです。

マイケル・ガンボン主演の伝説のTVドラマです。これずーっと見たかったのですが、やっと見ました。って、そんなことばかり書いていますね、最近。

まずはフィルム・ノワールの世界が登場します。ハンフリー・ボカートが登場するような映像。いやだってね、マイケル・ガンボンの役名がフィリップ・マーロウなのですよ(笑)。そういうフィルム・ノワールな物語でガンボン氏が歌う探偵なんだなと思っていたら、顔面が爛れてベッドに横たわっているガンボン氏登場。どうやら全身の皮膚が爛れ関節も変形したりで動けないらしい。乾癬性関節炎を煩っている設定でした。何が何だかさっぱり分からない。最初のエピソードを見たらただ混乱するだけでした。でもなぜか惹き付けられて先を見たくなるのです。

ガンボン氏はフィリップ・マーロウという名の探偵小説作家という設定です。自分が書いた物語で主人公の探偵を妄想の中で自らが演じ、自作の探偵物語を頭で反芻する。その小説の物語に自分の子供時代の記憶や病室のベッドの上で現実に起こっている様々な出来事が入り交じります。

訳が分からないのにどうしてこんなに面白いのだろう。一度見ただけでは良く分からない。多分、何度見ても分からない部分があるのでしょう。しかしまー、これ、カルトですね。カルトの見本のような作品です。好きな人と嫌いな人ときっぱり別れる作品だ。

1986年の作品なのですがマーロウの子供の頃の記憶なのか妄想なのかトラウマなのか、複雑な心象風景に登場する両親からして豪華絢爛です。マーロウの父役でジム・カーター、母がアリソン・ステッドマン。意地の悪い看護師でイメルダ・ストウトン。ジムとイメルダは夫婦で出演です。マーロウの宿敵(?)にはパトリック・マラハイド。芸達者な出演者ばかりで見応えが有り過ぎます。一番驚いたのはジョーン・ウォーリー。このちょっと安っぽい別嬪さん誰だっけ?と思ったら、ヴァル・キルマーの元嫁じゃないですか。この人どうして場末な感じがするのかな。看護師の役だから化粧も濃くないし、役柄も気立ての良い優しい看護師なのに、なぜかハスッパに見える。惜しい。美人なのに。

マーロウは歌う探偵です。キャバレーで歌いまくります。まさしくスタンダードばかり歌います。その歌は父が歌っていた曲。そしてその歌詞がマーロウの心情を代弁する。母と二人でロンドンへ向かう汽車の中から見る案山子が気になっていたら、そうきたな!という暗示を込めたものでした。汽車の同じコンパートメントに座っていた軍人達の中に若き日のデヴィッド・シューリスがいた。この人には妄想が似合う。

現実と妄想と記憶がごちゃ混ぜになるので、私が今見ているこのシーンは記憶なのか妄想なのか、大変混乱しました。ミュージカルが苦手なのは息も絶え絶えで死にかけている人が朗々と歌い上げる事に白けてしまうからで、そんな非現実的なものを押し付けられてもとても受け入れられないからなのです。しかし、最初からこれが現実なのか妄想なのか良く分からない世界であれば、唐突に始まる歌と踊りに拒否反応が起きない。面白い(笑)。

見終わって思った。案山子って怖いよね。

脚本を書いたのはデニス・ポター。乾癬性関節炎を煩っていたそうです。長年苦しめられたこの病気はストレスなども原因になるらしい。半自伝的な作品だそうですが、自分の過去を振り返り記憶を呼び起こしてトラウマを克服しようとしたのでしょうか。こう書くと安っぽく聞こえますが。マーロウが妄想に悩まされながら、精神科医とのやり取りの中で過去のトラウマから徐々に解放されるに従って皮膚の爛れが良くなっていく。初めてマーロウの顔のアップになると、一体この人どうしちゃったの???と驚いてしまいました。なぜこんなに執拗に顔のアップを写すのだろうと必要以上な顔のアップを見せているように感じました。でも皮膚の状態を見ている側に良く見せる為のアップだったのだな。そうでないと、徐々に爛れが良くなっていくのが分かり難いから。

デニス・ポターの作品は「ドリーム・チャイルド」くらいしか見ていませんが、この二つを見ただけでデニス・ポターという人が子供の頃に受けたトラウマに人生を左右されるような影響を受けているのが分かりますなー。怪し過ぎるよ、この人。好み!