ないまぜ日記

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Let the Right One In

【ネタバレ警報】

邦題は「ぼくのエリ 200歳の少女」です。
日本版のDVDには肝心要のシーンが修正されていて内容が激変してしまうような事態になっているというではありませんか。うーむ。由々しき問題です。邦題も少女としてはいけないでしょう。そんな事して見る人を誤解させてはいけません。そもそも、日本語の一人称が問題ですな。性別が分かり易いから。

主人公のオスカーは色素が殆どない真っ白な少年。それに対してエリは黒髪。真っ白な雪の中に白と黒の子供が二人。この映画、白黒映画にしたら良かったのじゃないかと思いました。何しろスウェーデン映画ですから真っ黒の背景に白いタイトルロールです。あー、またモンティ・パイソンが邪魔をする・・・。

寒さで吐く息が白くなる中で薄着のエリが登場します。撮影の時、寒かったろうなーと思いました。当然オスカーも気になるわけで、寒くないのと尋ねると寒さがどんなものか思い出せないとエリは答えます。良い台詞です。

エリと一緒にいる男。最後まで名前が分からなかった。一見するとエリの父親。でも血を持って帰る事に失敗してエリに怒鳴られるのを見ていたら父親ではないんだなと分かってくる。夜中にモンブランが食べたいと言い出した女に使いに出された男が結局は買えずに帰ってきて「なんで持って帰って来ないのよ。私はモンブランが食べたいのにー!」と癇癪を起こされているようです。なぜモンブランなのかは不明。

この怒鳴り上げるエリの声が男の声のように聞こえたのです。あの男が女の我が儘に翻弄されて困っているんだけれど、心のどこかで翻弄されているのを喜んでいる様に見えた。オスカーとエリが仲良くなっていくのを嫉妬し、今夜は会わないで欲しいと懇願し、エリに頬を撫でられて至福を感じる男。エリに血を提供する事を受け入れ、最期には自分の血を捧げる男。

ここまで見ると、オスカーの行く末はこの男に成り果てるのだと分かってきます。そうじゃないと良いなと思いつつ、そうだったら二人とも満足かな、とも思い、でもエリはオスカーにあの男と同じような人生を歩ませたくはなかったんだろうなぁ。

オスカーの母がどうして離婚したのか、一切説明はありません。オスカーが父親の家へ行った時、父親の友人が尋ねてきます。この男が単なる友達ではなくて恋人だというわけです。*1あー、それで離婚したのか。オスカーもその二人を見て拒否反応も見せずに受け入れたように見える。

受け入れること。タイトルの「Let the Right One In」は色々なことを受け入れるという意味だそうです。エリにとってオスカーが、オスカーにとってエリが運命の人"The Right One"だと受け入れるまでの過程を描いているという事でしょうか。ヴァンパイアは誰かのいる場所へは招いてくれないとそこへ入る事が出来ないというのも興味深いです。受け入れるという事が色んな意味で登場するというわけです。

エリがオスカーに抱きしめられた時、女の子じゃないけど良いの?と尋ねるのが良く分かりませんでした。普通の女子じゃないけど良いの、という意味なのかと勝手に解釈しようとしていました。しかしエリが着替えているのをこっそり覗き見たオスカーはエリが元は男の子だったことが分かります。いや、分かったのかな、あの傷を見ただけで。というか、どうして取っちゃったのか? 病気か怪我で取る必要があったのか? あの男を怒鳴り上げる声がまるで男みたいに聞こえたのはこのせいだったのか。

混乱。

見終わってからこの映画の事を検索してみると原作ではあの男は小児性愛者だったということ、そしてエリがカストラートだったと*2分かりました。でもカストラートなら●はとってもペ○スは取らなかったはずです。●さえ取れば変声期を迎えないのだからそんなことする必要ない。原作者はカストラートが全部取っちゃうと思っていたんでしょうか。あの男のエリに対する愛情はオスカーがエリに対して抱いていた気持ちと同じものだと思っていたのになぁ。くそー、あの男にちょっと肩入れした私が馬鹿だったわ。だいたい、血の集め方がなってない。なんでそんなに不用意なんだ。今まで良く捕まんなかったなー、おめーさん。

でもそういえば・・・。
”ちゃんとしたガールフレンドになるには何かしなきゃいけない?”とエリがオスカーに尋ねると”何もしなくてもガールフレンドだよ”とオスカーが答えてほっと安堵したようなエリでした。あの安堵した表情はあの男との間に体を提供する代わりに血を集めてくるという契約関係を結んでいたんだなーと思わせました。でもオスカーとはそんな契約なんぞまるで必要がない。ただただ一緒にいたいから一緒にいるだけ。

エリには自分は十二歳のまま、けれどオスカーはあの男のように年老いていく事が分かっています。それでもオスカーを助けて二人で生きて行く事を選んだ。なんて切ないんだ。無垢で純粋なことは本当に辛い。純粋だと言う事は偏見もなく、何かを受け入れるのに理由はいらない。年を取って色々なことを経験すると偏見という名の知識を溜め込んで何かを受け入れる事には理由が必要になり益々受け入れ難くなってゆく。

ラストシーン。電車に乗ってどこかへ旅立つ二人がモールス信号で会話します。
暗闇の黒の世界と陽が射す白い世界。
エリとオスカーの世界。

*1:コメントで通りすがりさんからこの解釈が間違いだと教えて頂きました。これで納得できた。

*2:同上