ないまぜ日記

映画、海外ドラマ、音楽、その他諸々、ないまぜ日記

人生の精算

今月末で人生を精算することにした。

これまでも諸事情で何度か人生を精算する事を断念した。

どうしてもっと早く精算しなかったのか。

もっと早く社会復帰していたら。

それが悔やまれる。

いやもうどうでも良い。

独り暮らしをする楽しみを満喫する。

 

夫(もうすぐ元夫)と一緒に住み始めてすぐ、何やら得体のしれない違和感があった。その違和感は言葉では簡潔に明確に表せない違和感だった。いつも殆ど無表情なのに慄いた。目を見て話さない。会話のキャッチボールがまるで出来ない。話の途中で全く違う話で割り込んでくる。いくら説明しても話の主旨とはズレた答えしか返ってこない。説明の仕方が悪いのかと色んな違う言い方をしても、返ってくる言葉は一言一句変わらない。20秒前にタイムスリップした?と思えるほど、違う聞き方をしても同じ答えを何度も繰り返す。双方が違う話をしているような答えが返ってくる。聞きたくない話は「その話は終わり!」と自分勝手に宣言して強制終了だ。一番イライラするのは鸚鵡返しにされる事だ。私が質問している方なのに夫が鸚鵡返しで質問してくる。その度に質問しているのは私です!と言わなくてはならない焦燥感。打っても響かない、暖簾に腕押し、暖簾の向こうには真空の宇宙が広がっているようだ。リビングは宇宙の果てのレストランのように何処からも誰からも遠く、二人でいるのに果てしなく一人ぼっちという孤独感は私の精神をとてつもなく疲弊させた。

 

夫に感じるのは自閉症スペクトラムの人に対する違和感だろう。と、私は確信している。素人判断に過ぎないが。診断は本人にまるで自覚がないので出来るはずもない。夫は仕事に対して並々ならぬ集中力を発揮するらしく一生懸命やるので、それなりに出世したようだ。だが本当に仕事以外には何もない。それが私には恐ろしくて仕方ない。

 

数年前にアスペルガー症候群が話題になった。話題になるという悠長な状況ではないのだが、これまで得体のしれない夫に対する違和感、その頃にはある意味で恐怖に成長していたが、漸く納得できた。アスペルガー症候群を今では自閉症スペクトラムと言うそうだ。

 

自閉症スペクトラムの人には自分以外の人の気持ちを推測する想像力がないらしい。自分の視点からしか物事を判断しない。だからこその冷酷な言動になるということが理解できた。その脳の仕組みは納得出来るが、冷酷な言動を私は受容出来ない。精神をズタズタに傷付けられる。

 

おのれ、良くもそんなことぬかしやがったな!

 

何度激怒したか最早思い出せない。結婚して半年で10Kg太った。イライラするから過食に走ったのだ。大きなトラブルが起きる毎に体調が悪くなった。耳鳴りが鳴り止まなくなり、不眠症になり、血糖値も血圧もドンドン上がった。耳鳴りが酷くなって高音域は難聴だ。アラーム音が非常に苦手になった。今回の台風に伴う避難勧告などの警報音も耳鳴りを酷く増強させるので、血圧が上がって心臓がバクついた。

 

体の不調もあるが精神的に参りそうになるのが一番恐ろしかった。その恐怖を紛らす為に映画やドラマの世界に逃げ込んだ。今思えば編み物を始めたのも現実逃避だった。なんとか自分の世界に逃げ込んで夫とのあらゆる事への共有感の無さを、薄気味悪さを考えないようにしたが、所詮そんなものは対症療法に過ぎない。冷酷な言動を無視出来るほど達観していないし、寛大でもなければ忍耐強くもない。ただ誰に相談しても「男の人はそんなものよ〜。うちもそう!」と言った返事しか返ってこない。いやうちとは状況が違うと思うよ!と言っても仕方ない。私がおかしいのかと随分悩んだ。だが、どう考えても我慢にも限界がある!と九州に帰る計画を立て、仕事や部屋を探すのだが、その度に大きなトラブル発生でそれどころではなくなった。ま、それも自分に対する言い訳になる。

 

従兄弟が死んだ日、葬儀に出席する為に東京と九州を往復して精神的にも肉体的にも疲労困憊の状態で夜遅くに帰宅した。夫は予想内の状況ではあったがその言動にプッツリと切れた。予想出来るから許せるという問題ではないとその時に思った。そこで最終的に決心した。東京では家賃が高いが時給も高い。フルタイムで働けばなんとか生活は出来る。旅行には滅多に行けなくなるが、夫から逃げ切る事が最優先だ。粛々と荷物を整理し始め部屋を探した。

 

私から離婚すると言った後での夫との話し合いがやはり全く噛み合わず、長期化すると思った。泣いて土下座したり逆ギレしたりする夫を私は淡々として眺めるだけだった。夫が泣いても土下座しても同情心など微塵も湧き上がらないのは我ながら驚いた。そこまで嫌気がさしているわけだ。11月に私が出ていくと聞くと突然夫の態度が変わった。出て行くのを止めても無駄だとやっと分かったらしい。私が出て行ったらすぐに夫が「自分で離婚届を出す」と言われた。賃貸契約は今の名前で手続きした、他の手続きもあるのでちょっと待ってくれと頼むと「それはそっちの問題でしょ。俺には関係ない。」との返事が帰ってきた。全くその通りだが、これこそが夫に疲れ切った核心だった。自閉症スペクトラムの症状の最たるものだと思う。相手の都合や感情は一切気にならない。分からないので気にならないのだ。思わず笑ってしまった。

 

もう振り回されなくて済む。

久しぶりの独り暮らしが楽しみで仕方ない。