ないまぜ日記

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ウルフ・ホール

面白いの一言に尽きる。エゲレスの役者達の濃密な演技を堪能できるドラマでした。無駄に盛り上げる音楽や過剰な効果音を付けない削ぎ落とされた演出が役者の演技を際立たせています。

トーマス・クロムウェルの視点で描かれるヘンリー8世に纏わる物語です。当然、アン・ブーリン狂言回しで登場します。アンを演じるのがクレア・フォイ。巧いですねー。自己愛が強く計算高いサイコパス的な役作りで一筋縄ではいかない強かな女が見事でした。クロムウェルを演じるマーク・ライランスアン・ブーリンに縁がありますね。「ブーリン家の姉妹」ではアンの父、トーマス・ブーリンを演じていました。一見すると人の好さそうな垂れ目のマークですが、人には言えない経験を積んで獲得してきたであろう知略を巧みに使いこなす感じが笑っちゃうほど巧い。

なんていうか、ヘンリー8世の周囲の人物っていうのは、浮き沈みが激しくて、まーそれは、宮廷というところの必定ではあると思うのですが、劇的な人が多過ぎるなー(笑)。クロムウェルにしても鍛冶屋の息子が伯爵になるわけだし、トーマス・ウルジーにしても肉屋の息子が枢機卿ですからねぇ。トーマス・ハワードは姪の二人がヘンリー8世と結婚した挙句に姦通罪で処刑されるわ、大逆罪でロンドン塔に幽閉されるわ、その割に命拾いして長生きしてたり。

ダミアン・ルイスヘンリー8世なのですが、このキャスティングを考えた人が偉い。アンに操られて精神的にどんどん不安定になって判断力を失っていく虚ろな目が恐ろしいのです。国の頂点に立つ男が狂っていくのを間近に見るのはぞっとするだろうなぁ。クロムウェルは確実に王がおかしくなってきてると気が付いているはずなのにどこまでもヘンリー8世に忠実で、理性だけでは割り切れないものがあるのを感じられます。女王では国が乱れるという脅迫観念が永遠に国のあり方を変えてしまったわけですが、国が繁栄するのは女王エリザベス1世の治世だという皮肉。

私の大好きなアントン・レッサーはトーマス・モアを演じていますが、もう、何を演じても良いものは良い。ジョナサン・プライスが演じるトーマス・ウルジーも素晴らしく、良い役者は何を演じても良いのだ! これまで私が持っていたウルジー枢機卿の概念をぶっ壊すお茶目で愛嬌のある枢機卿でした。「あー、やっと現れたな、私よりも低い生まれの者が(笑)。」と喜ぶウルジー枢機卿が可愛いのです。