ないまぜ日記

映画、海外ドラマ、音楽、その他諸々、ないまぜ日記

グランド・ブダペスト・ホテル

欧羅巴の歴史の重みが哀しくて笑った。歴史の重みというより複雑さと言えば良いのか、複雑過ぎて問題の発端を最早誰も覚えてないっていうか。これは映画館に観に行かなかったのを本当に後悔しました。メイキング映像を是非とも見たい。

ズブロフカ共和国はハンガリーをモデルにしたのでしょうが、ちょっとポーランドっぽいところもあります。クルーベックという仮想の通貨は如何にもそんな通貨の単位がありそうですが、モデルはあるのかなー。ハンガリーの1930年代当時の通貨はペンゲーだそうですが、通貨がドンドン変わるというのが本当にすごい。価値観が揺らぐなんて言葉で簡単には片付けられない。

配役が凄いので、一々、おおおお、ボブ・バラバンがリッツ・インペリアルのコンシェルジュ!とか驚きっぱなしでした。バラバンのきめ細かな目の演技に感心した。これだけの役者を集められるのがウェス・アンダーソンの才能なのかもしれません。ジェフ・ゴールドブラムは久しぶりに見たなー。ウィレム・デフォー扮する探偵はサイレント映画で悪役が登場する時と同じでクスッと笑える。クスッと笑えるシーンが多いんですよねー。随所にパロディかオマージュかパスティーシュか、なんと呼べば良いのか分からない小ネタが散りばめられているのでしょう。

どこまでがセットなのか。その完成度の高さには全面的に白旗を上げます。参りました。ウィーンの美術史美術館は建物が既に芸術であまりの豪華さに半ば呆れるほどでしたが、ハプスブルク家の権力が如何に甚大であったのかを思い知らされました。あまりに豪華過ぎて嫌味なんですよ。でも趣味が良いからやり過ぎても下品にならないところが、やっぱり成金趣味とは違うのだろうな・・・。そういうやり過ぎなその豪華さをこの映画から存分に味わうことが出来ました。ホテルがアルプスにあるっていうのがまたねー。あるよ、あるある、こんなホテル。何もかも如何にもありそうな国、街、ホテル。監獄がチェックポイント19だって。あはははははは。チェックポイント・チャーリーじゃなくて19。

ゼロが絵をかっぱらう事を唆すシーンの面白さ。あの目の雄弁なこと。で、すり替える絵がエゴン・シーレ風というオチで爆笑しました。エイドリアン・ブロディ扮するマダムDの息子ドミトリが「林檎を持つ少年」が盗まれたことにようやっと気がつくシーンも楽しい。ドミトリが部屋に入ってくるとグスタフ・クリムト風な絵が床に置かれているのが映り、「林檎を持つ少年」とすり替えられたシーレ風の絵を見て激怒。叩き割ってしまいます。あー、クリムトもシーレもあとちょっと待てば高値が付いたのに勿体ない。大体さー、「林檎を持つ少年」がハンス・ホルバインの絵みたいなんだもんなー。あ!ハンス・ホルバイン(子)の方です。いやー、ゴールドブラムが「林檎を持つ少年、ホイトル・・・若い方」と間をおいて口にした途端にドミトリ絶叫。そーだよねー。父の絵より子の方が値が張りますからねー。大違いなのだ。

レイフ・ファインズのムシュー・グスターヴは素晴らしいのですが、ひとつだけ残念なのはレイフの育ちの良さです。マダムD(なんだこの違和感?と思ったら、ティルダ・スウィントンが老けメイクしていたからでした。)から「一緒にルッツへ来て!」と言われたムシュー・グスターヴはつい地が出てしまい「くそったれルッツへ? F_cking Lutz?」と言ってしまうのですが、育ちが良いレイフには似合わない。胡散臭さは演技で出せても育ちの良さが隠せない(笑)。悲しいなー、育ちの良さが悪影響だなんて贅沢な悩みですわねー。だからと言って、他にこの役にぴったりの役者が思いつかない。年上の女性の相手をする男をレイフが演じるという皮肉。いっそのことマダムDをフランセスカ・アニスが演じたら最高だったのに。洒落にならんか。

トム・ウィルキンソン扮する作家の孫、ロビー・ボーイのゼロ、「ムーンライズ・キングダム」のサム。
三人とも同じ目だ。すごいなー。どうやって見つけるんだろう、あんな目の男の子。