ないまぜ日記

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戦火の馬

この映画は成田からドバイへの機内で見ました。これ1本見ただけでやっとでした。色々みたい映画はあったので残念。

ウェストエンドで評判だった舞台と思っていたら児童文学の原作があったんですね。確かに子供へ聞かせるにはとても良い話だと思います。子供にとって面白い話は大人にも面白いという見本のようなお話です。そうであって欲しいと思う希望を刺激されるというか。馬に対する素直で健全な愛情を描く素敵なおとぎ話でした。不健全で倒錯的な馬への愛情はピーター・ファースの「エクウス」をどうぞご覧あれ(笑)。

今はもう閉鎖されましたが、実家の近くには実況アナウンスが聞こえるほどの距離に競馬場がありました。当然、厩舎もありましたから馬というのは私にはありふれた動物でした。勿論、自分の馬でもないですし、乗ったりすることはなかったわけですが。実家の最寄りの駅に着くと風向き次第で馬糞の臭いが微かにしました。馬糞の臭いを嗅ぐと実家に帰って来たなと思うほど(笑)。わたしは普通に思っていたのですが、馬と言う動物は大抵の人は目にすることがないんですね。競馬をする人ならともかく。我が家の常識が実は他所のお宅では非常識というのをこの年になって益々強く感じるようになってきました(大笑)。

ということで、馬には特別な思い入れがあります。英国軍とドイツ軍との中間地帯へ紛れ込んで有刺鉄線が絡んで動けなくなっていくジョーイを見ていたら眉間に皺が寄って仕方なかった。これだから動物の映画は困る。動物ものは反則だ。そしてスティーヴン・スピルバーグの映画だというのを忘れてました。卑怯な手を使う監督なのだ。「シンドラーのリスト」とか。赤いコートを着た女の子のことは多分死ぬまで忘れません。あれは本当に卑怯な手だったなぁ(笑)。

アメリカ人にとって世界大戦といえば第二次世界大戦。でも英国人にとっては第一次世界大戦の方が傷が深いのだと思います。この戦争で大英帝国は崩壊してしまうから。数百年に渡って独り勝ちだった大英帝国はひとつの戦争で破綻しアメリカに富を奪われてしまいます。これ以上の屈辱はないでしょう。塹壕戦が主流だったこともドラマを生む温床になっているのかもしれません。これほどドラマになりやすい舞台はない。騎士道精神で戦おうとする騎乗の軍人にマシンガンの銃弾が降り注いだら一体何が起こるのか。最早、接近戦の時代は終わったわけです。ベネディクト・カンバーバッチがこの時代に呑み込まれた少佐を演じています。ベネちゃんが馬に乗っていると、どっちが馬なのか分からないくらい馬面です。この馬面には軍帽が似合うねぇ。しかし戦術というのはすぐに変えられるものじゃない。シェルショックという戦争後遺症が社会問題になるのも当然です。これまで人類が経験した事のない戦争を経験したのですから。

塹壕戦を経験した人が何かに希望を見出したとしたら、それがどれほど些細な事だろうと生き抜こうとする動機には十分なんでしょう。塹壕と有刺鉄線で埋め尽くされた最前線にもし雑草であっても芽を出したら、そこに命を見るのだと思います。ぺんぺん草ひとつ生えない最前線の中間地帯で生き延びた馬がいたらどうよ! 奇跡の馬だと思うのは敵も味方も無関係です。否応なく感動させますね、この物語。

ラストシーンがさー、あれってどうなの??? 夕日に染まる空を背景に黒くシルエットで写るエミリー・ワトソンは「風と共に去りぬ」のヴィヴィアン・リーそっくりでした。スピルバーグは意識していたんだろうか。

そしてこの映画も英国俳優総出演。デヴィッド・シューリスを久しぶりに見ました。ゴールド・フィンガーはやっぱり素敵だった。